オーガニックとは、何でしょう。今や「いいもの」の代名詞のようになったこの「オーガニック」という言葉は、日本語になおしてみると、その意味がもっと分かる気がします。オーガニック、つまり有機とは、そこに生命または生命力が宿っているということです。そうなると「生命」って何なんだろう、と根源的な疑問に直面するのですが。
この一年、自分にとってとても大切な「食」の場所のPRコミュニケーションに関わり、キッチンから畑、そして仕入れまで沢山の食の現場に立ち、取材をしてきました。その中で、有機そして生命の意味、というクエスチョンに対し、少しではあるものの自分なりの理解と回答を持ち始めた気がします。
生命とは、つまり創造力であると思う。そして創造力とは循環のことである。それが私の中にある、今最も確信がもてるこたえです。
人々の心を満たす素晴らしい料理をつくる人々、そしてその素材を育てる農家の人々、彼らにあるのは知識や経験以上に創造力でした。有機栽培や有機食材を使って何かをつくろう、というのはそのあとにくることで、素晴らしい創造力をもってなにかに取り組むと、自ずとサスティナブルな方法を取るようになるのではないでしょうか。ソースか一杯から、ピタ一枚から、自分たちでつくろうよ。その美しい心を養うのは創造に対する情熱であり、その情熱を最高の形で表現するためには、本当によい食材を使うしか選択肢がないのです。「それってオーガニックですか」そう質問する自分を、いつの日かなんて薄っぺらいインタビュアーなのかと感じ始め、恥ずかしくなったこともありました。
そしてその創造力から生まれた食べものというのは、本物の栄養となってきちんと身体に吸収されます。優しい心を育てます。その心がこんどは誰かに何かをしてあげたい、誰かの幸せを創造したい、という感情に変わるのです。そしてそこから、新たな創造が生まれると思うのです。
よい食材、素材も循環の中にあり、命の全体計画のなかでエンドレスに生まれては土に帰り、水となり、空気となり、また生まれる。
香りの仕事に関わり続け、思えば香りもそうでした。本当に心を動かす香水は、肌の上に居座ること無くいつしか消えていくのです。消えていくということは無くなるいうことではなく、わたしの一部になるということです。思い出の一部になる、お金では買えない心を動かす感動となる、そしてそのわたしが未来を創造していく。
生命とはその繰り返しではないかと思います。プラスチックは、残念ながら循環の中には入ることはできないように。
オーガニックに生きるとは、創造力をもって生きること。循環の中に生きること。一部のための全体でなく、全体のための一部として生きること。まだまだ知らないことの方が多い、けれどもこれらが今私自身が理解している生命に対する解釈です。だから生命を授けられた私は、来年も創造を絶やさず生きたいと思います。無機ではなく、有機であるからこそ。
来年は30歳になる年。100歳まで生きるつもりなので、その約三分の一を生きたことになります。生命にたいする考えが、残された三分の二の人生の中で、どのように変わっていくのか。楽しみです。
*今年見せてもらったたくさんのクリエイティブな「食の風景」。相棒カメラと脳内メモをもって取材し綴った記録、シェアできましたら幸いです。
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